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ITPとは?
概要やWeb広告への影響を解説

Webマーケティング・Web広告業界にいる方であれば、ここ数年で「ITP」という言葉を聞くようになったかもしれません。本記事では、そんなITPの概要やこれまでのアップデートの歴史、Web広告への影響を簡単にまとめています。

言葉の意味を知りたい方、広告にどんな影響があるのか知りたいという方々に、参考にしていただければと思います。

ITPとは?

ITP(あいてぃぴー)とは、Apple社が開発したプライバシー保護機能です。主にAppleが提供するSafariブラウザにおいて、ユーザー(インターネット利用者)様のCookieを規制し、トラッキング(追跡)を防止するため実装されました。

ITP(Intelligent Tracking Prevention)
ユーザー様の個人情報保護を目的にApple社が開発した、トラッキング防止機能。Cookieを制限・無効化させるため、iOS11以降のSafariブラウザに搭載されています。

簡単に言うと、今までWeb上でユーザー様がたどる行動履歴をブラウザで計測できていましたが、プライバシーを保護するためSafariでは計測できないように制限をかけます、といった機能です。

ITPを理解するにはCookieやトラッキングについても知る必要があるため、具体的に説明させていただきます。

Cookieとは?

Cookie(クッキー)は、Webサイトの閲覧履歴やID・パスワード、IPアドレスなどの情報をブラウザへ一時的に保存できる仕組み(テキストファイルのこと)です。
日頃Webサイトを見ている中で、例えば以下のような経験はないでしょうか?

  • 一度訪問したWebサイトやSNSへ再度ログインする際、パスワードがそのまま入力され自動ログインができた
  • とあるECサイトでカートに入れたまま買わなかった商品が、再度同じサイトに訪れた際にもまだカートに残っていた
  • 過去に見たことある広告のバナーが、別のWebサイトを見ているときにも表示されるようになった

これらの事象にはCookieの働きが影響しています。Cookieにより、ユーザー様がブラウザ上で行動した履歴を一時保管することで、再度アクセスする際にすぐ情報を取り出せるようになるため、Webサイトの利用をより快適で便利なものにしています。

なお、Cookieには種類があり大きく分けて「1stPartyCookie」「2ndPartyCookie」「3rdPartyCookie」が存在しており、それぞれ発行元と利用目的が異なります。2nd Party Cookieは少し細かい話になり、ITPを理解する上であまり重要ではないため割愛しますが、「1stPartyCookie」と「3rdPartyCookie」の違いについては以下の表をご覧ください。

発行元 利用目的
1stPartyCookie
(ファーストパーティクッキー)
ユーザー様がアクセスしたWebサイトのサーバーが発行 ログインやカゴ落ち(カートに入れた商品を購入せず離脱すること)などに利用され、Webサイトを巡回する利便性向上のために役立つ
3rdPartyCookie
(サードパーティクッキー)
ユーザー様がアクセスしたWebサイトとは異なる第三者(広告媒体等)のサーバーが発行 Web上でユーザー様の行動を追跡し、傾向を分析して興味関心が高そうな広告を表示させることに利用される

例えば、WebサイトAを訪問した際、WebサイトAから発行されたCookieは1stPartyCookieです。同様にWebサイトAを訪問した際、一瞬リダイレクトさせるなどの方法で、サイトAとは違う外部の第三者Bから発行し付与されたCookieは3rdPartyCookieとなります。
3rdPartyCookieは、主な利用目的からも分かるとおり、Googleなどの広告媒体から発行されることが多いものです。

トラッキングとは?

トラッキングとは、特定のユーザー様がWebサイト内でどこを閲覧しているのか、どこを経由してWebサイトにたどり着いたのか等を追跡することを指します。その追跡や分析をするツールの一つとして活用されているのが、Cookieです。

なぜITPでCookieが制限されるようになったのか?

Cookieは前述のとおり、Webサイトを快適に見られる便利な機能です。しかしその一方で、ログインIDやメールアドレス、IPアドレス、Webサーバーとの接続情報など、様々な情報を保持する性質のため、取り扱い方法が議論されるようになりました。

通常、Cookieだけでは個人を特定することができないため、それ単体では個人情報に該当しません。ただ、Cookie情報と他の個人情報データを突合させることで個人の特定ができる可能性をはらんでおり、個人関連情報という位置づけで取り扱いを注意すべき情報の一つとなっています。

なお、欧州ではプライバシー保護に関して対策が早く、GDPR(EU一般データ保護規則)という法令で、Cookieは個人データとして保護するべき情報として位置づけています。

こういった動きから、Safariを提供しているAppleがインターネットユーザー様のプライバシー保護のため、ITPという仕組みを導入してCookieによるトラッキングを制限するようになりました。Apple社を追うように、ブラウザChromeを提供しているGoogle社などもプライバシー保護のためCookieの制限を開始しています。

ITPによるCookie制限の変遷

ITPは徐々にアップデートを重ねており、その度に3rdPartyCookieおよび1st PartyCookieの制限が厳しくなってきています。アップデート内容を簡単にまとめると以下のとおりです。

バージョン アップデート実装日 3rd Party Cookie 1st Party Cookie
ITP1.0 2017年9月 24時間で無効化、30日で削除 制限なし
ITP2.0 2018年9月 即時削除 4つ以上のドメインからリダイレクトされている場合、無効化・削除(3rd Partyと同じ扱いに)
ITP2.1 2019年2月 即時削除 7日間で削除
ITP2.2 2019年3月 即時削除 24時間で削除
ITP2.3 2019年9月 即時削除
  • 24時間で削除
  • Cookieの代わりにlocalStorage(※)を用いてトラッキングしていたものも7日間で削除
ITP2.3
※機能追加
2020年3月 Cookie発行を完全ブロック
  • 24時間で削除
  • Cookieの代わりにlocalStorageを用いてトラッキングしていたものも7日間で削除
  • iOS14のアップデートによりSafari以外のブラウザも制限の対象になる
など

※実際はそれぞれもう少し細かく適用される場面や追加機能があります。
※localStorage(ローカルストレージ)... Cookieとはまた別の、データを保存する仕組み

上記のように3rd Party Cookieおよび1st Party Cookieが、だんだんと制限が厳しくなってきたのが実情です。

Google社も2024年の後半までにChromeで3rdPartyCookieを廃止するとしていましたが先日延期の発表がありました。
何度か延期になっているので今後の計画も変更される可能性があり、Google社の動向には注視が必要です。

ITPによるWeb広告への影響

ITPが一番関係するのは主にWebマーケティング・Web広告業界です。何が起こるかを一言で言うとCookieを利用して配信していたWeb広告の精度が落ちることにつながります。日本はiPhoneの利用者が多いことからSafariの利用率も高く、モバイルのブラウザシェア率はSafariが約60%程で第一位です。つまり、ITPによるWeb広告の計測への影響が大きいことを意味しており、広告メニューを展開する各媒体は、Cookieに依存しない計測方法の開発が急務です。具体的な影響例としては以下です。

①リターゲティング広告が制限される

リターゲティング広告は、自社の広告を訪問したことがあるユーザー様のCookieデータをもとに、別のWebサイトを見ている際に再度広告を表示させる仕組みの広告です。
ITPによりユーザー様が保持するCookieが制限・削除されてしまうようになったため、広告を配信できる総量が減ることにつながります。

②ターゲティング広告の精度が低下する

Cookieから得たユーザー様の情報をもとに、年齢性別や興味関心などを推測し最適な広告を表示させるターゲティング広告。情報取得がこれまでより困難になるため、精度が落ちることに影響します。ターゲティングの精度が落ちるということは、ターゲット以外の人へ広告が配信される確率も上がるため、広告費(CPC/CPM)の高騰につながる可能性があります。

③アフィリエイト広告でコンバージョンの計測が困難になる

「商品購入」や「資料請求」など、ユーザー様が起こしたアクションを計測できるアフィリエイト広告ですが、そのコンバージョン(成果)の数をカウントする仕組みにはこれまでCookieが使われてきました。ITPにより、ユーザー様が広告経由でアクションを取っているのにコンバージョンの計測ができていない、という事象が発生することが考えられます。広告主様にとってはアフィリエイト広告の正しい効果がわからないということになりますし、広告を掲載する媒体様側は成果報酬型で収入を得ているため、コンバージョン数の減少=収入がそのまま減ってしまうことにつながり、死活問題です。

広告主様がすぐできるITPへの対策

プライバシー保護を強化する流れは止められないため、3rdPartyCookieは使えないことを前提にした広告展開を考える必要があります。なお、ターゲティングやアフィリエイトなどの広告メニューでは、サービス提供者側でそれぞれCookieに依存しない計測の仕組みを導入していることもあるので、Web広告を出稿している広告主の皆様におかれましては、現在使っている各広告サービスに問い合わせを行ってみるのがおすすめです。各社の見解や計測の仕組みを確認の上、指示通り計測方法の切り替え等を行うことがまずできるITP対策です。

【主にできるITP対策】
  • 各広告サービスにお問い合わせの上、利用するタグを適宜最新のものに更新する
  • 1stPartyCookieを活用した広告施策を検討する
  • Cookieに依存しない計測方法や広告メニューを随時キャッチアップ・導入する

まとめ

今回はITPの概要を主に説明しました。

Web広告業界は各社対応をしながら、ITPに適応できるように努めています。
広告主様もITPについて基本的な知識を持っていれば、広告を提供している事業者側とコミュニケーションを図りながら最適な計測方法や広告メニューを選択していけると思うので、少しでも参考にしていただければ幸いです。

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