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ペルソナとは?
BtoCマーケティングで使うペルソナの概要と、メリットや設定する手順を解説

「ペルソナ」の設定は、企業が商品開発やPRを行う上で欠かせないプロセスです。顧客や見込み客の悩み・ニーズを正確に把握しながら事業を展開すれば、購入や契約、リピーター獲得等が効率よく進む可能性があります。

今回はそんなペルソナについて、概要や具体例、設定するメリットなどを解説させていただきます。

ペルソナとは?

ビジネス・マーケティングのシーンで使う「ペルソナ」は、商品/サービスを利用する典型的な顧客像のことを指します。誰のためのどんな商品/サービスかを明確にするため、具体的にイメージできる架空の人物を作り上げ、その人の思考や行動を多角的に分析し捉えることで顧客像の理解を深めます。その上で、その人物にはどのようにアプローチすれば購入や契約につながるかをストーリー立てて考え、マーケティング施策の精度を上げていくことに使われます。これをペルソナマーケティングとも言います。

「ペルソナ」のもとは人格・位格を表すラテン語「persona」に由来しており、ギリシャ演劇で使用される仮面をペルソナと呼んでいました。転じて、心理学では人間の外的側面、つまり周りの人に見せる顔のことを「ペルソナ」と表すようになります。人間は様々な顔を無意識に演じ分けながら周囲の環境に適応しようとしている、という考え方です。また、性格や特性を意味する「パーソナリティ」の語源もペルソナからきています。

なお、特定の「人物」イメージをペルソナに設定するマーケティング手法はBtoCのビジネスにおいて有効ですが、BtoBにおいても特定の「企業」を想定したペルソナを設定することがあります。

ペルソナの具体例

実際、企業が設定しているペルソナとはどのようなものでしょうか。具体的な例としては以下のようなものです。

名前
伊藤 麗奈
性別
家族構成
独身、一人暮らし
年齢
27歳
仕事
会社員。大手広告代理店の営業職
居住地
東京都渋谷区(1Kマンション)
年収
550万
経歴
大学進学を機に仙台を離れ都内で一人暮らし(明治大学経営学部)開始。
新卒で現在の会社へ入社し、5年め。部下3人を持つリーダー職
性格
負けず嫌い、活発、行動的、社交的で友だちが多い
ライフスタイル
月~金:10時~20時ごろまで仕事。夕方まで外回りの営業が多い
土日:休日の日中は友だちと過ごすかウォーキング/ジムに行くため家にあまり居ない
趣味
メイク、ジム、読書、ウォーキング、岩盤浴
休日の過ごし方
友だちと買い物や映画、パーソナルジム
よく使うアプリ
LINE、Instagram、YouTube
消費の傾向
美容にお金を使うことが多い。
ほしいと思ったらあまり比較検討せず購入。買っても使わないことがある
実店舗でも通販でもよくモノを買う
洋服はプチプラが好き
メイク用品・基礎化粧品はプチプラ~デパコスまでカバー。集めて色々試すのが好き。
悩み
・イタリア旅行に行きたいがまとまった休みが取れずなかなか行けない
・一人暮らしのマンションは狭い上に物が多く、仕事が忙しいためあまり片付かない
・たまにニキビができる
その他情報
・実家は仙台。仙台には両親、弟、犬がいる
・目標達成意欲が高いキャリアウーマン。経済的に余裕あり
・食事はほとんど外食。仕事が忙しいためコンビニや外食で済ませ家ではめったに作らない
・恋人はいない。それよりも仕事や自分磨きが楽しい
・体型を保つためお酒は飲まず、油っぽいものも好きではない

※BtoCビジネスのペルソナイメージ

このように、具体的にとある一人を思い描き、パーソナリティや思考傾向を深く分析しながら理解していきます。その上で、この人に満足してもらうために商品開発をしたり、購入ストーリーを検討してPRに活かします。なお、ペルソナを作成するタイミングは、新しい商品を開発する際か、もしくは既存の商品/サービスを改善する際などにも用いられます。

ここまで細かく設定する必要があるのかと思われる方もいるかもしれませんが、企業が扱う商材によっては重要な役割を持ちます。例えば化粧水を販売していこうと思った際にも、誰に向けてどのような商品を作るか・販売するのかにより、商品設計や広告戦略・メッセージが異なるためです。ターゲットとする顧客の性別・年齢だけでなく、収入(富裕層向けや大衆向け等)、パーソナリティ(面倒くさがり・手間暇を惜しまない)、どんなライフスタイルの中でどのように使ってほしいのかなど、消費者ニーズと商品がたくさんある今の時代だからこそ、きちんと整理してどう戦うかを具体化することが大きな意味を持ちます。実際、一人の顧客像を満足させることを追求し、結果的に大ヒットした商品もありますので、しっかり筋道立てて作り込めば一つのマーケティング手法として有効です。

なお、ペルソナを構成する情報要素は主に2つに分けられます。

【デモグラフィック】
統計学的属性のことで、定量的に計測できる情報を指します。
例:性別、年齢、職業、居住地など
※このうち居住地をジオグラフィックと呼ぶこともあります。
【サイコグラフィック】
心理的特性のことを指し、顧客像の行動傾向や思考を深く理解するために用いられます。
例:性格、趣味、価値観、ライフスタイルなど

この2つの要素をかけ合わせ、より立体的でリアリティある人物像を作ります。「こういう人いる」と思えたり、「この人であればこういう動機で物を買わない」など具体的にイメージできるかがポイントです。

ペルソナとターゲットの違い

ペルソナと似た言葉でターゲットというものがあります。こちらもよくマーケティングに使われますが、ペルソナとは以下の違いがあります。

ターゲット ペルソナ
グループ
商品/サービスの顧客となりそうな属性集団
個人
商品/サービスを利用する典型的な顧客像
構成する情報の要素 定量
(デモグラフィック)
定量(デモグラフィック)

定性(サイコグラフィック)
構成情報例 20代 独身
女性 会社員
東京都在住
20代 独身
女性 会社員
東京都在住
練馬区で一人暮らし
玩具メーカー勤務・広報担当
面倒くさがりでマイペース
ものを買うときは慎重に比較検討
旅行など体験にお金を使う
人の解像度 抽象的 具体的

どちらも販促を行う上でアプローチすべき対象という点では同じですが、ターゲットは定量データをもとに区分できる属性グループと定義されるのに対し、ペルソナはそのグループの中の特定の個人を想定します。それぞれ活用されるシーンも異なり、ターゲットは広告やメルマガ配信する際のセグメントなどに使われるのに対して、ペルソナはカスタマージャーニー設定時や広告素材・コンテンツ等の制作時に使われます。

ある意味ペルソナの方は定量的なデータはあまり重要ではありません。20代の会社員女性と括っても、人によって悩みや行動原理は様々ですので、それよりも思考や行動動向、何に悩み何がきっかけで購入するのかという定性面が大事になります。

ペルソナマーケティングのメリット

企業がペルソナを設定するメリットは、いくつか挙げられます。

  • 顧客視点で考えられる
  • 見込み客の理解を深めることができる
  • 事業に携わる関係者で顧客イメージの共通認識が持てる
  • マーケティング施策の精度を上げられる

一言で言うと「顧客視点で一貫性ある商品・PRができる」という点が主なメリットです。顧客様やニーズあってのビジネスですので、企業側の一方的な押し売りにならないよう、マーケティングにはお客様のインサイトを正確に捉える顧客視点が欠かせません。また、多くの企業では企画や販売、マーケティングなど様々な部署で分業していると思いますが、それぞれで違う顧客像をイメージしていては、例えば商品設計と広告の訴求が合わない等の事象が発生し、事業展開が効果的にできない可能性があります。ペルソナを作ることで、顧客像について共通認識を持ちながらプロジェクトの進行ができるため、その意味では組織全体の業務効率化にもつながるという捉え方もできます。また、一貫性あるPRができれば無駄な広告配信も減らせますので、コスト削減にもなります。

ペルソナを設定する手順

ペルソナは架空の人物設定ですが、主観や先入観、希望的観測で作成せず、なるべく客観的なデータを集め、それをもとに分析し作り込むことが重要です。

①情報収集

まずは根拠となるデータ・情報を集めます。定量面と定性面の両方をできる限り多く収集すれば、より解像度が高いペルソナが作れます。参照元は、すでに購入者や契約者がいれば既存顧客様のデータ、その他自社サイトのアクセス解析、インタビュー/アンケート調査等が有効です。加えて、SNSの声も参考情報になります。

【集めるべきデータ】
デモグラフィック変数
年齢、性別、居住地、家族構成、収入、職業など
サイコグラフィック変数
購入動機、商品を知った情報元、検索キーワード、普段情報収集する手段、抱えている悩み、目標、価値観、ライフスタイル、趣味、休日の過ごし方、習慣など

デモグラフィックは「誰が」ターゲットになるか属性をある程度絞ることができ、サイコグラフィックでは「なぜ」買うかの深堀りに役立てることができます。

このとき、すでに長く自社商品/サービスを利用しているリピーターや会社のファンなどロイヤリティの高い顧客の情報を集められれば、より正確なペルソナ作成に役立ちます。
新規事業でまだ既存顧客がいない、あるいは顧客が定まっていない場合には、大まかなターゲットを決め、その層の方にアンケート調査を行うのが有効です。対象となりうる人たちと繋がりがない場合、リサーチ会社に依頼するのも一つの方法です。

②収集した情報の分類・分析

収集したデータを分析し、整理しながら必要な情報のみに絞っていきます。

③ペルソナの作成

まずはアウトラインを制作します。情報収集段階で得られた顧客の情報から、共通する特徴を抽出していき、大体の人物像を作ります。そこへ、よりリアリティある人物にするため経歴や購入ストーリーなどの詳細を肉付けしていきます。例えば「ジムに行く」ことがライフスタイルの人であれば、なぜジムに行くのか(肉体美のためかダイエットか)、ダイエット目的であればなぜ体型に課題を感じているのか、痩せる方法としてジムに通うことを選択したのはなぜか等まで掘り下げていけば、自社商品/サービスとの接点や購入ストーリーが具体的にイメージできるようになっていきます。

サイコグラフィックの面については特にどの項目をペルソナに設定すべきか迷われるかもしれません。実際、企業や扱う商材によって定めるべき項目が異なりますが、購入や契約の意思決定に影響しそうなエピソードや思考、行動動向は欠かさず入れるようにしましょう。例えば仕事や職種は人物像を具体的にするため重要な項目のように思いますが、BtoC商材のペルソナを設定する場合はどちらかというとその詳細よりは年収や可処分所得、購入の意思決定に関与する家族構成やライフスタイル等のほうが重要な要素となる可能性があります。

④運用

ペルソナが決まれば商品開発やマーケティングに活かしていきます。ペルソナが「面倒くさがりな上自分の時間が取りずらい子育て中の2児の母」と決まれば化粧品もワンプッシュで使えるボトルタイプが便利かもしれませんし、広告にいれるキャッチコピーも「ワンステップ」や「〇〇するだけ」のようなメッセージが好まれるかもしれません。また、購入に慎重なペルソナには商品を比較検討できるSEOサイトへの広告掲載が良い可能性があります。このように、ペルソナをもとに開発〜広告戦略までを一貫して行えば、より効果的な事業運営ができます。

ペルソナマーケティングの注意点

ペルソナマーケティングを実践する上で知っておくべき注意点をいくつか挙げます。

①主観や先入観を入れて設定しない

先にも少し触れた通り、先入観や希望でペルソナを作り上げないことが最重要ポイントです。一般的によく連想されるイメージに引っ張られ、年収が高い=高級志向、アウトドアが趣味=アクティブ・社交的など、あまり熟考せず「こういう人いるよな」「こういう人であれば商品を買ってくれそう」という思いでペルソナを作り上げてしまうことは危険です。年収が高く可処分所得が多くても低価格帯のものを好む人もいますし、アウトドアが好きでもアクティブであるとは限りません。こういった思い込みを排除し、また一人ではなく何人かで客観的に評価を協議しながらペルソナを作り込むのがおすすめです。

②ペルソナには見直しが必要

ペルソナ作成は一回作って終わりではなく、運用開始後に定期的な見直しが必要になります。消費者ニーズは絶えず変化しますし、最初に設定したペルソナが誤っていることもあります。そのことを念頭に、マーケティングを行う上でうまくいかなかないことが出てきた際にはペルソナの設定を疑い、再度インタビューや調査でデータを集め分析したり、定期的に社内で協議したりして設定を再検討するのも重要なプロセスになります。

まとめ

今回はペルソナについて概要や設定する手順等を解説しました。

マーケティングの手法は様々ある中で、ペルソナマーケティングはもう古いのではという意見もあります。AI技術の発達により個々人に合った広告を配信する精度も上がっていますし、消費者様が商品/サービスを知るタッチポイントも多様化しておりすべてのケースを想定しきれないため、顧客像を深く掘り下げたり、購入までの体験をストーリー立てて考える意味があるのか?という視点です。

しかし、誰に対してどんなものを作りたいかという、ある意味「想い」が乗る商品企画の段階からAIに任せるのは困難ですし、立体的である人間を表面のデータだけでは捉えきれません。調査・検討に時間とコストはかかりますが、顧客像の理解を深めること、事業に関わる関係者で共通認識を持てる点など、まだまだ意味のある分析になると思いますので、本記事を参考に、ぜひ実践してみてください。

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