コラム
- コラムトップ
- LTV(顧客生涯価値)って何?計算方法や活用方法をご紹介
LTV(顧客生涯価値)って何?
計算方法や活用方法をご紹介
ビジネスを行う上で重要視される「LTV」。Web広告にも深い関わりがあり、重要な役割を持ちます。
今回は言葉の意味や重要性、Web広告でどのように活用できるのかを説明させていただきます。
LTVとは?
LTV(えるてぃーぶい)は、Life Time Valueの頭文字を取った略語で、一人の顧客/消費者が取引を開始してから終了するまでにもたらしてくれた利益のことを指します。日本語では「顧客生涯価値」と言われます。
- LTV(Life time Value)
-
日本語で顧客生涯価値。
1顧客様が取引(購入等)を開始してから契約完了までにもたらしてくれる利益。
企業はそれぞれ、個人または法人と取引を行い利益を得ています。一つひとつの取引には、一回きりで終わるものもあれば、継続して行うものもありますが、LTVは取引一回ごとの利益だけでなく、一人(一社)と取引開始からその後発生した取引も含めて得られた利益を指します。一般的にLTVの数値が高いほうが=利益が高いということになるので、良しとされています。もちろん、どんな取引も一回きりで終わるより、継続して購入・契約してもらえたほうが利益が出るのは明らかです。そのため、多くの企業様がLTVを向上させられるように工夫しながら事業を行っています。
LTVの計算方法
計算方法はいくつかあり、どこまで含めるかも企業によって考えが異なりますが、一般的に知られている計算式は以下です。
LTV=顧客単価×購買頻度(回/年)×継続期間(年)
EC、通販でリピート商材を扱う事業社様やサービスを扱う事業社様など、幅広く活用できます。
例えば10,000円の商品を年4回買ってくれる方が、3年継続して購入した場合、LTVは10,000円×4×3=120,000円という計算になります。
粗利率を含めて考える場合
商品・サービスの粗利率を含める場合には、上記の計算式に粗利率を入れればOKです。
LTV=顧客単価×購入頻度×継続期間×粗利率
販売やサービス提供に原価がかかり、顧客との取引がそのまますべて利益にならないケースなどにはこちらを使うとより正確なLTVが計測できます。
顧客の獲得・維持にかかったコストを含めて考える場合
新規顧客の獲得や、既存顧客維持のコストを含める場合、一般的な計算式からコストをマイナスすれば算出が可能です。
1)LTV=顧客単価×購入頻度×継続期間−(顧客獲得コスト+顧客維持コスト)
2)LTV=顧客単価×購入頻度×継続期間×粗利率−(顧客獲得コスト+顧客維持コスト)
企業様によって新規顧客の獲得方法・既存顧客の維持方法は異なりますが、広告費や人件費、キャンペーン費用などがここでいう「コスト」に該当します。
サブスクサービスで算出する場合
サブスクリプション(※)サービスなどを扱っている事業社で、顧客様の継続期間がわからない場合、解約率を元にLTVの算出ができます。
1)LTV=平均顧客単価÷解約率
2)LTV=平均顧客単価×粗利率÷解約率
- ※サブスクリプション
-
月や年単位など期間区切りで契約して定額料金をもらうことで、利用する権利を提供するサービス。
例:動画や音楽配信、食材宅配、SaaSなどのクラウドサービスも該当
解約率は一定期間の間にどれだけのユーザー様が自社サービスから離れたかを表す数値で、算出方法は複数ありますが、とある月で【解約した会員数÷解約前の会員数】を算出するのがシンプルです。
事業全体で概算する計算方法
ユーザー属性(年齢や性別等)や、どうやって獲得した顧客様かなどでそれぞれのLTVが分かればベストですが、あくまで全体の数値を知りたい場合は、以下の計算式でも算出可能です。
LTV=(売上高-売上原価)÷顧客数)
LTVが重要視されている理由
LTVは、単純に定量的に利益が計れるというだけでなく、商品/サービス・会社への愛着や信頼度を計る指標にもなります。
LTVが高いことは、1顧客が継続して購入や契約をしてくれているということを意味するので、言い換えれば顧客と良好な関係を保つことが出来ていると判断できます。既存顧客との良好な関係づくりには、近年ますますどの企業様も注力して取り組むようになっているため、LTVが注目されるようになりました。
既存顧客とのつながりを重要視する傾向が強まっているのには、以下のような背景があります。
新規顧客獲得の難しさが増している
商品/サービスの供給量に対して需要する人の割合が多かったこれまでの時代とは異なり、現在は人口減少傾向に加え、新規ビジネスへの参入も比較的容易になり各所で市場飽和が起こっています。つまり、人に対して商品/サービスの量が多い状況にあるのが現代です。そのような背景で新規顧客の獲得競争が以前より激化し、困難になっているため、一顧客あたりから得られる利益向上が重要になっています。
もとより、新規顧客を得るにはそれなりのコストや労力が必要です。新規顧客獲得は既存顧客の維持よりも、コストが5倍かかると言われています。売上げを伸ばす上で欠かせない活動ですが、そればかりに注力していても長期的な売上げには結びつきづらく、積み上げや利益率改善ができないという課題が出てきます。そのような中で、既存顧客との関係に着目してビジネスを行う必要性が増してきました。
サブスクリプションのビジネスモデルや、
カスタマーサクセスの職種が普及したため
近年、デジタル化が進み定額で利用の権利を販売するサブスクリプションのサービス、コンテンツが増えました。
BtoBではSaasを含めたソフトウェア、BtoCでは動画や音楽を始め、飲食店や車や服のレンタルサービス、旅など様々な業界に広がり、ものを買って所有するという今までの消費活動に加え、定額で体験するというお金の使い方が普及しました。サブスクは従来の売り切り型のビジネスとは異なり、顧客様が解約するまで売上の積み上げができるビジネスモデルで、いかに顧客に継続して利用してもらえるかがポイントとなります。そのため、LTVを重要指標として捉えて事業を行う企業が多く出てきました。
また、同時期に「カスタマーサクセス」の取り組みを行う企業も増えてきました。
カスタマーサクセスとは、自社の商品/サービスを通じて顧客の成功を支援するという考え方です。以前からあった「カスタマーサポート」、顧客からの問い合わせを受けて回答する受動的なサポートとは異なり、能動的に関わり伴走して顧客の課題を解決しながらも、サービスを継続利用してもらうことで自社の売上にもつなげていく職種です。カスタマーサクセスの成果の指標としてはまさにLTVが用いられることが多く、こういった考え方・職種の浸透もLTVが重要視されるようになった背景の一つとしてあるように思います。
もちろん、サブスクモデルではない事業でも、カスタマーサクセス部門がない企業でも、LTVの考え方は活用できます。一回売って終わりが基本のビジネスでも、一度自社と接点を持ってくれた顧客様と積極的にコミュニケーションを取り、自社商品/サービスを通じて継続して悩みの解決法を提供することで双方Win-Winになります。
不動産や車など、一生涯でそう頻繁に買わないものを扱うビジネスの場合は、あまり使えない指標かもしれません。一部そういった例外はありますが、既存顧客様を大切にすることが効率的な売上向上につながる事業は多いため、それを定量的に評価し、事業改善に使うことができるLTVの計測はおすすめです。
広告におけるLTVの活用方法
LTVは、Web広告を展開する際や、広告効果を評価する際にも活用されています。
適切なCPAや広告費の設定がしやすくなる
CPA(Cost Per Action/Acquisition)とは、日本語で顧客獲得単価という意味で、1人の新規顧客を獲得するのに費やす(費やせる)コストを指します。各企業様は自社の扱う商品/サービスの単価や、それを作る原価をもとに、適切なCPA、1顧客獲得あたりに使える単価を導き出します。Web広告やその他マーケティング活動を行う中で、CPAを見ることで赤字になっていないかや利益が出ているのかの判断ができます。
CPAについて詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
CPAには様々な算出方法がありますが、LTVの概念を含めて算出できると、より最適な目標値の設定ができます。
例えば、10,000円の商品を販売し、CPA20,000円で1顧客獲得した場合、この一回の取引だけ見ると-10,000円の赤字です。 ただ仮に、この顧客様が5ヶ月、毎月1回同じ商品を購入してくれた場合、累計で50,000円の売上になります。CPA20,000円で+30,000円になっているため、継続した取引を含めたLTVの観点から見ると赤字ではなく、(原価にもよりますが)むしろ利益が出ていると判断することができます。
言い換えれば、LTV>CPAなら利益が出るということです。
一回一回の取引だけでCPAを算出してしまうと、どうしても使える費用が低くまとまりがちです。もちろん、広告費は安く抑えられたほうが良いですが、広告を出す目的や状況によっては、CPA上限を上げて出稿を増やしたほうがより効果的なPRになる局面があります。そんなときにはLTVをもとに、2回目以降のリピート購入(契約)で初回の広告費を回収するモデルで考えれば広告の施策の幅が広がりますので、広告出稿前に目標CPAを算出する際にはLTVを用いて計算することもご検討ください。
広告の効果を評価する指標にも使える
自社で出している広告が、望む成果に繋がっているのかどうかや、うまく回っているのかを判断する指標は複数あります。先に挙げたCPAもその一つです。広告出稿して顧客獲得するにあたり、赤字になっていないか、利益が出ているのかを計測できます。
LTVも、広告を評価する指標に活用可能です。LTVは、どの広告経由の顧客様がロイヤリティ(商品/サービスに対しての愛着や信頼)が高いのかを確認するのに使えます。
実際に広告を複数出していると、掲載する媒体や出稿方法によって新規顧客の質はまったく異なります。仮に顧客獲得件数と顧客獲得単価(CPA)が同じであってもその事象は発生しますので、CPAだけ見てその広告が良い施策だったか否かを判断することは困難です。そこで、どの広告経由の顧客様が一番LTVが高いのかを合わせて計測することで、違った視点で広告の良し悪しを見極めることができます。
具体的な例を挙げると、仮に初回購入80%OFFの割引を押し出した広告Aと、初回購入10%OFFの割引の広告Bを、同じ時間だけ出稿した場合。割引率が魅力な広告Aのほうが顧客獲得が効率よく進み、CPAを低く抑えることができたとします。広告BのほうがCPAが高くなりました。
この際、CPAの視点だけで広告を評価すると、安い広告費で顧客を多く獲得できるAのほうが良い広告に見えるかもしれません。しかし、もう少し気になるのは初回購入後のリピート率です。 広告AはCPAが抑えられていても、安くなっていたから買ったという新規顧客様が多く、もしかしたらリピート率が悪いかもしれません。10%OFFで購入してくれた新規顧客様のほうが商品に対するロイヤリティが高く継続購入につながり、LTVを比較すると広告Bのほうが良いと判断できる可能性も出てきます。
このように、LTVは適切なCPAの設定に使えるだけでなく、出稿した広告の結果がどうだったのかを評価する際にも役立つ指標になります。計測の際には、広告を出した媒体や、ユーザー属性ごとなどでできるだけ細かく分けて計るのが分析と施策選定に役立つのでおすすめです。
LTV向上のためできること
繰り返しになりますが、LTVは数値が高いほうが、1顧客あたりの利益が高いことを意味します。それでは、どうしたらLTVを上げることができるのか?いくつか方法を簡単にご紹介します。
①顧客単価を上げる
一番シンプルな方法は1顧客様あたりの単価を上げることです。
- 施策例:
-
- 商品/サービスの単価を上げる
- アップセル ... 上位の商品/サービスへの移行を促す
- クロスセル ... 自社の別の商品/サービスの購入、セット購入を促す
商品/サービスの単価を上げることはLTVの向上に直結しますが、単価を上げるだけでは顧客離れにもつながりかねませんので注意が必要です。アップセルの方法は、単価の高い商品/サービスのサンプルや体験版を提供することでそちらの契約を促したり、キャンペーンで初回割引をつけるなどの方法があります。クロスセルの方法は、まとめ買いで割引をつけたり、関連商品の同時購入のメリットを打ち出したりすることなどが挙げられます。ECサイトでレコメンド機能をつけることも同時購入につながります。
②購買頻度を高める
商品/サービスの購入頻度を高めることも、LTVの向上に繋がります。
- 施策例:
-
- 顧客様とコミュニケーションの機会を増やす
- 適切なタイミングで再購入の案内を送ること
コミュニケーションについては、メルマガやSNS等で定期的に情報発信をすることが有効です。自社の商品/サービスを忘れさせない工夫はもちろん、商品/サービスの使用方法の提案もおすすめです。商品/サービスの用途を様々提案できれば、顧客様は新しい気づきを得られ、購買のきっかけになる可能性があります。
③顧客維持率を上げる(取引期間を延ばす)
顧客維持率を上げ、解約率を下げることもLTV向上のための重要な活動です。
- 施策例:
-
- アフターフォローやカスタマーサポートを充実させる
- CRMツールなどで顧客を一元管理して、適切なタイミングでフォローする
- ポイント付与や会員ランク制度を導入する
購入/契約後のフォローやサポートは、顧客様との接点を維持できる大切な役割を持ちます。人的リソースが足りず、人の手でサポートを手厚くするのが難しい場合にはECサイトにチャットボットツールを入れるなども有効です。顧客様が困ったときにすぐそれが解決できる体制であるというのが肝ですので、できることから対策していきます。
購入/契約にインセンティブをつけ、モチベーションを上げることも方法の一つです。例えば自社ECの買い物で使えるポイントを付与したり、会員ランク制度を作りランクに合わせた特典を与えることなども、解約を防げる可能性があります。
まずは解約率が高い顧客層を調べることから始め、その理由を分析して、それに合った施策を打てるように検討しましょう。
顧客獲得コスト・顧客維持コストを下げる
顧客獲得維持/コストを含めてLTVを考える場合、これらのコストを抑えることでもLTV向上になります。自社の課題がどこにあるのかを見極め、ときにはSFAやCRMなどの業務支援・顧客管理システムを活用して、業務の自動化やリソース軽減をはかることも方法の一つです。ただし、それらの利用にも費用が発生することになりますので、費用対効果を考慮した上で選択するのがおすすめです。
まとめ
デジタル化が進み、顧客管理や属性ごとのデータ分析もしやすくなりました。LTVは、利益率の高い企業体質をつくるために重要な指標ですので、計測して広告や業務改善などに積極的に活かしましょう。