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マーケティングに役立つ13の心理学

普段私たちが目にする広告や販促物には、消費者の目を引く工夫が多く施されています。一見、キャッチコピーや写真・画像を用いた広告制作の仕事は、クリエイティブで芸術的なもののようにも思いますが、人間心理をうまく突いた科学的なアプローチである側面もあります。

そこで今回は、マーケティングに活かせる心理学の理論をいくつか紹介させていただきます。

どんなに良い商品やサービスを作っても、人の目につかなければ勿体ないので、マーケティングや販促活動にお悩みのご担当者様の参考になれば幸いです。

心理学とマーケティング

まずは、なぜマーケティングと心理学が関係するのかについて少し触れていきます。

心理学とは、人の心のメカニズムを研究・解明する学問です。大昔から、人はなぜ人を愛するのか?喜ぶのか?など感情・思考に対する疑問や探求はありましたが、科学的な学問として形を成してきたのは19世紀後半頃のことです。そのため、100年少ししか歴史のない比較的新しい学問です。

心理学のはじまりの頃は、心理過程や意識を内観法(自己観察)で探求してきたのが主でした。実際には観察できないものを被験者自身に探らせるという、客観性に欠ける方法で心を考察しようとしたわけですが、これに対して、客観的に観察できる行動から科学的に心理を分析・研究すべきだと唱えたのがアメリカの心理学者ジョン・ワトソンです。そこから、行動やしぐさから心理を紐解く研究がスタートし、ジョン・ブレイザーという心理学者が行動心理学という学問を確立していきました。

無意識に取るしぐさに心理が現れる、心と行動はつながっているというこの考え方は、逆を言えば、心理をうまく利用すれば行動を誘引できるという捉え方もできそうです。企業が行うマーケティング活動は、消費者の購買「行動」を促進させるための仕組みづくりとも言えるので、そのように考えると、心理学とマーケティングは密接に関わっていると言っても過言ではありません。実際、行動心理学から提唱された心理現象のいくつかは、企業の販促に活かされています。さらに近年では、経済学と心理学を融合した行動経済学という学問も登場しており、心理学を用いた経済活動の研究・分析が進んでいますので、このような側面から見ても、心理学とマーケティングは切っても切り離せない関係であることがわかります。

マーケティングに活かせる13の心理的効果

ここからは実際にマーケティングで活用されている心理学の理論をご紹介します。

①ザイオンス効果(単純接触効果)

ザイオンス効果とは、特定のものや人に何度も繰り返し接触すると、その回数が多いほどそのものに対して興味を持ったり好感度が高まるという心理効果です。社会心理学者ロバート・ザイオンスによって実証されました。被験者に対しいくつかの写真を繰り返し見せ、それぞれにどのような印象を抱くのかを問う実験では、見せた回数が多いものに好感を持つ傾向があるという結果が得られたそうです。

この心理効果はメルマガやCMを含めた広告、SNSの更新などに活かすことができます。やり過ぎは禁物ですが、定期的に顧客様や見込み客の方と接点を持つことで、企業認知にもなりますし、好意を持ってもらうため有効です。注意点としては、マイナスな感情も接触回数に応じて増すという点です。自社に対して嫌悪感や不快な感情を持った人に対して接触回数を増やすのは避けたほうが良く、あくまで無関心・友好的な方々に対して接点を増やすということがポイントになりそうです。

②カクテルパーティー効果(カクテルパーティー現象)

カクテルパーティー効果とは、多くの雑音がある中でも、特定の情報を選択的に聞き取ることができる現象のことです。パーティー会場などの色々な声や音が飛び交う場所でも、興味がある情報や必要な情報だけをはっきり聞き分けられるのは、脳が数ある情報の中から自分に必要としているものを無意識に取捨選択しているためです。なお、聴覚だけでなく視覚によっても無意識に情報の選択が行われているとも言われています(カラーバス効果)。

この効果はマーケティングにおいて、意図せずとも多く活用されているように思います。例えば広告にいれるキャッチコピー一つにしてみても、広く大勢に向けて発信するメッセージだと誰にも注目されない可能性があるため、ターゲットとなる消費者様に向けて、自分のことだと思わせる情報の伝え方が重要です。仮にスポーツジムの入会を増やしたい場合、「入会者募集」とだけ広告を出すよりも、「今より筋力をつけたい30代男性必見」「夏までに足痩せしたい人注目」等の、特定の人に向けたキーワードで広告を出せば、該当する方の目に止まりやすくなる効果が期待できます。

③ウィンザー効果

ウィンザー効果とは、当事者よりも第三者を介した情報のほうが信頼されるという心理効果です。例えば誰かに直接褒められるより、第三者から「Aさんが褒めていたよ」と言われる方が信頼性や嬉しさが増す傾向がある、というものです。実際、ミステリー小説のウィンザー伯爵夫人のセリフ「第三者の誉め言葉がどんなときにも一番効果があるのよ」という言葉から由来しています。

マーケティングにおいても非常に有効で、企業が直接発信するメッセージよりも、利害関係のない、中立的な第三者が発信すれば信憑性が増す効果があります。そのため、レビューや口コミ、SNSなどで第三者からの意見を集め・発信してもらう仕掛けづくりが、販促に大きな影響を与える可能性があります。

④カリギュラ効果(カリギュラ現象)

カリギュラ効果とは、行為・行動を他者から禁止されることで、かえってその欲求が高まる心理現象です。見るなと言われると見たくなる心理は、昔話「鶴の恩返し」「浦島太郎」などでも表現されています。人間の好奇心や「自分で選択したい」という、もともと持っている欲求に制限をつけられ、ストレスがかかることで抗いたくなる心理です。

マーケティングの場面でも、テレビCMやWeb広告で「絶対に見ないでください」「〇〇な人以外申し込まないで」などのキャッチコピーで注意を引くことや、雑誌の袋とじ等の仕掛けには、このカリギュラ効果が用いられています。あまり過度に用いると逆効果になるため注意が必要ですが、うまく表現に使うことでターゲットを強調してWebサイトのクリック率を高めたり、購買意欲アップにつなげられる可能性があります。

⑤バンドワゴン効果

バンドワゴン効果とは、多くの人が支持するものが、さらに支持を集めやすくなる効果のことです。簡単に言うと、「皆が持っているからほしい」という心理です。パレードの先頭を行く楽隊車「バンドワゴン」から由来しており、大勢を引率するその様子から「時流に乗る」「多勢に与する」などとも表現されます。アメリカの経済学者ハーヴェイ・ライペンシュタインが提唱しました。行列ができる飲食店に行ってみたくなったり、SNSでたくさんいいねを集めているものを見ると、皆に人気があるなら良いもののはず、と考え購入意欲が湧くなど、皆様にも経験があるのではないでしょうか。あるいは恋愛でも、それまでなんとも思っていなかった人を、友だちがかっこいいと言っていればかっこよく見えてくることもありますし、政治の世界でも同様の現象は見られます。人間は大昔から周囲と関わりながら生きている社会的な生き物なので、消費行動に流行や他者の評価が影響する「社会的証明の原理」の現れとも言えます。

この効果を意識してマーケティングに活かそうと思うと、例えば広告のLPやバナーに「利用者累計〇〇人突破」「人気No1」のキャッチコピーをつける方法などがあります。ただし、景表法に注意です。事実をもとにすることはもちろん、表現にも気をつけましょう。

⑥スノッブ効果

スノッブ効果とは、多くの人が持っているものは持ちたくない、逆に限定品や一点ものなど人と違うものに惹かれる心理効果です。バンドワゴン効果とは真逆の心理現象ですが、同じ人(ハーヴェイ・ライペンシュタイン)が提唱しました。人とは違う自分になりたいという、差別化欲求に基づく考え方です。なお、周囲と同じものがほしい心理(バンドワゴン)と、周囲とちがうものがほしい心理(スノッブ)は同じ人の中でも並存することが研究でわかっています。

マーケティングにおいてもこのスノッブ効果を利用した販促が行われており、数量や季節限定、会員特典など〇〇限定という言葉は、希少性を簡潔に伝える一つの方法です。また売り方に活かすだけでなく、販売するもの自体を他社にない珍しい製品を扱えれば、消費者にとって価値あるものになるでしょう。

⑦ヴェブレン効果

ヴェブレン効果とは、高価で希少なものを所有し周囲に見せつけたいという心理作用です。自己顕示欲を満たしたいという思いが原動力になっていると言われています。こちらもバンドワゴン効果・スノッブ効果同様にハーヴェイ・ライペンシュタインが提唱したものです。代表的な例としてはハイブランド商品の購入、高級車や高級時計の所有などが挙げられます。製品の品質や性能よりも高価格であることに意味があり、ステータスシンボルとしてそれらを選ぶ消費行動が確認されています。この心理を活かすには、価格帯はもちろん、素材や品質にこだわり、広告の出し方も工夫して高級感あるブランディングを確立させて消費者にアピールすることが、マーケティングにおいて重要になりそうです。

⑧返報性の原理

返報性の原理とは、受けた恩恵を返したくなる心理効果です。優しくしてもらったらお礼をしたい、ピンチを助けてくれたお返しがしたい等の気持ちになるのは、心理的負債を負うことからきています。

マーケティングにおいてもこの原理を使って消費行動を促すことが可能です。イメージしやすい例では、食品の無料試食や化粧品のサンプル配布などを行い、購入を促すことが挙げられます。営業の世界で知られる交渉術「ドアインザフェイス」もこの返報性の原理をうまく利用しています。ドアインザフェイスは、最初に大きい要求を提示し断られた後、本来通したかった要求を提示することで承諾率を上げる交渉方法です。相手に対して心理的に貸しを作るとは、少し躊躇したくなるようなテクニックかもしれませんが、こういう技術もあるということを参考に、うまく取り入れてみてください。

⑨損失回避の法則

損失回避の法則とは、利益を得ることよりも損失を避けることを優先させようとする人間の習性です。行動経済学者のダニエル・カーネマン氏と心理学者のエイモス・トベルスキー氏が確立したプロスペクト理論の一部として提唱されました。例えば、コイントスして表が出れば5万円もらえるが、裏が出れば3万没収されるというゲームがあった場合。ゲームに参加するかしないかを問われれば、参加しないほうを選ぶ人も多いのではないでしょうか。表が出るか裏が出るか確率はいずれも半々の状況で、利益額のほうが高いため一見チャレンジするほうがよさそうなものですが、実際は参加しないことを選ぶ人のほうが多いことがわかっています。得よりも損したくないという気持ちのほうが行動動機になりやすいというのを端的に表している例です。

この法則をマーケティングに応用すれば、「購入・契約するメリット(利益)」よりも「購入・契約しないことのデメリット(損失)」を打ち出したほうが、消費者様の心を動かす可能性があると言えそうです。「今だけ〇〇%OFF」「1ヶ月無料キャンペーン」(※)などの文言も、この機会を逃すと損するという気持ちにさせる有効なキーワードです。その他、返金保証・修理保証も効果的です。買い物するからには損したくないという心理は多くの人が持つので、その気持ちを解消させる特典をつけることで購買意欲を引き出せます。
※「今だけ〇〇%OFF」「1ヶ月無料キャンペーン」などの文言を使用する場合は二重価格や有利誤認とならないよう注意が必要です。

⑩ハロー効果

ハロー効果とは、ある特定のものを評価する際に、一部の特徴的な印象に囚われて全体の印象をも歪めてしまう効果のことです。代表的な例としては、教授という肩書がある人の言葉であれば正しいだろうと思い込んだり、シワ一つないきれいなスーツを着てハキハキ喋る営業マンに会えば、優秀な人だと思ったりすることなどが挙げられます。非合理的な判断をする心理現象を「認知バイアス」と言いますが、そのうちの一つに該当します。ハロー効果の由来は聖人の頭上に描かれる光輪を意味するハロー(halo)から来ており、背後からの強い光によってその人のありのままの姿を捉えづらくなってしまう様子を表しています。

このような認知バイアスが人間心理にあることを念頭にマーケティングを考えていけば、より効果的なPRにつながります。例えば企業のイメージキャラクターで有名人を起用する際は、企業のブランドに沿った方を起用することで「あの人が推している商品であれば信頼できる」と思ってもらえる効果が期待できます。その逆も然り、商品やサービスは良いものにもかかわらず、社員やPRする有名人が不祥事を起こしてしまえば、企業自体の印象がネガティブなものになり、消費者の方々が離れる原因にもなるので、注意が必要です。

⑪バーナム効果

バーナム効果とは、誰にでも該当しうる一般的なことを言っているにも関わらず、自分のことだと感じる現象です。占い師に「なにか悩みがあるでしょう?」と言われたり、「A型は几帳面で慎重」と言われれば、言い当てられた、当たっていると思い込んでしまいます。自分が持っている仮説や願望を肯定させるため、無意識的に不都合な情報を無視して都合の良い情報だけを収集する「確証バイアス」のメカニズムが影響していると言われています。

この効果を利用すれば、親近感を持ってもらうこと、信頼を高めることに有効です。営業のシーンでも、冒頭「人事部の課題を解決するツールを紹介します」と話すよりも、「業務の中で候補者管理に困っていませんか?」というように投げかけるほうが、わかってくれている人だなと感じてもらえる可能性があります。同様に、広告のLPやバナーでも「日々のケアに悩んでいる敏感肌のあなたへ」「毎日の疲れが取れないビジネスマンの方へ」(※)のように、特定の人に投げかけるような構成にすることで、自分のことだ、自分の悩みを解決してくれる商品だ、と思ってもらう効果が期待できます。
※「毎日の疲れが取れないビジネスマンの方へ」などの文言を使用する場合、健康食品では疲労回復を暗示させないよう注意が必要です。

⑫ストループ効果

ストループ効果とは、同時に得られる複数の情報が矛盾するとき、それらが干渉しあって判断が遅れるという現象です。赤色で書かれた「赤」という文字は、何色かを問われればすぐ赤と回答できますが、赤色で書かれた「青」という文字を見せられ、何色かを問われても、文字と色が一致しないため情報処理に時間がかかり回答が遅れてしまうという内容です。アメリカの心理学者ジョン・リドリー・ストループが提唱したため、名前からそのまま由来しています。

情報処理に時間がかかるということは、言い換えれば脳にストレスがかかっているということもできます。それを踏まえると、例えば広告を作る際など、情報に一貫性を持たせたほうが、消費者がメッセージをスムーズに受け入れてくれる可能性があります。真夏にアイスを売る際には熱さを連想させる赤色を避けたり、格好良く洗練されたイメージを持たせたい商品には丸みのあるフォントを避けるなど、ちょっとしたことですが情報に統一性を持たせることで見る人に違和感を与えず、クリック率や購買率を上げるポイントになります。

⑬シャルパンティエ効果

シャルパンティエ効果とは、物理的な重さが一緒なものでも、視覚的に見える大きさの影響を受けて体積の小さいほうが重く感じられる現象のことです。具体的に言うと、大きい箱と小さい箱があり、どちらも同じ1kgだったとしても、視覚的に大きい箱のほうを軽いと感じ、小さい箱のほうが重たく感じる錯覚です。小さいほうが重いはずだと思い込んだまま持ち上げるので、実際には同じ重さでも小さいほうが重く感じるようです。

シャルパンティエ効果はあくまで「重さ大きさの錯覚」のことですが、マーケティングにおいてはもう少し広く解釈して活用されています。人の感覚は視覚等から得られる情報によっても左右されるということは、言い換えれば与える情報によって感じ方やイメージを操作できるという考え方です。例えば「〇〇成分1g配合」を「〇〇成分1,000mg配合」(※)と表記し配合量を多く見せる表現に用いたり、「年間12万」よりも「月1万」「一週間2,500円」と表記したほうが、実質払う金額は一緒でも安く感じる効果が期待できるため、購入や契約を促せます。
※「〇〇成分1g配合」「〇〇成分1,000mg配合」など、健康食品の場合は医薬成分の訴求をすることは出来ません。

まとめ

今回はマーケティングと心理学についての関係性と、販促で使える理論をご紹介しました。

消費者のニーズはもちろん、購買行動を起こす動機やメカニズムも知ることでより効果的にPRできる可能性がありますので、ぜひ参考にしてください。

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